観光大国フランスでトコジラミが増えている理由とは?旅行時の対策
フランスで人々の生活に影を落としている新たな問題、それは「トコジラミ」と呼ばれる害虫の大発生です。この小さな虫は、フランス全土を揺るがすほどの社会問題に発展しています。
最近では、フランス国民議会でもこの問題が取り上げられ、国民の睡眠と健康を守るための対策が求められています。実際、フランス高速鉄道や映画館など、公共の場でもトコジラミが目撃され、市民の間で不安が広がっています。
フランスでトコジラミの被害が続出
フランス政府は、トコジラミ問題を「最優先課題」と位置付け、新たな法案の提出を予定しています。また、パリ市は公共衛生問題として、緊急対策会議の開催を求めています。トコジラミの問題は、単なる害虫の発生を超え、国際的な観光業や公共衛生にまで影響を及ぼす可能性があるためです。
2024年にはパリオリンピックが開催されます。数百万人の観客がフランスに集まるこの大イベントでは、トコジラミによる被害が国際的な問題に発展する可能性があります。
既に2023年にフランスで開催されているラグビーワールドカップでは、トコジラミによる被害報告が後を絶ちません。観光客が多いパリでは、旅行者が一般の民家に宿泊する民泊も盛んに行われていましたが、トコジラミの問題が発生してからというもの、旅行者に部屋を貸すことを控える人が増えていると言います。
フランス政府と市民がどのようにこの問題に対処し、オリンピックを控えた大都市パリの安全を確保するかが、今後の大きな焦点となるでしょう。
フランスで被害が増えている理由とは
専門家は、トコジラミの増加の要因として、国際貿易や観光の増加、移民の流入などを挙げています。フランスは、モンサンミッシェルやヴェルサイユ宮殿、ルーブル美術館、エッフェル塔など魅力的な観光地が多く、毎年たくさんの外国人観光客が訪れます。ある調査によると、フランスには2010年〜2021年までの間、毎年平均7770万人の外国人観光客が訪れました。
フランス食品環境労働衛生安全庁によれば、2017年から2022年にかけて10世帯に1世帯以上がトコジラミの被害に遭っているといいます。
この背景には、かつてトコジラミを減少させたはずの殺虫剤に対する耐性がついた、スーパートコジラミの出現があります。市販されている殺虫剤では効果がなく、一度発生すると駆除するのが非常に難しいのです。
旅先でできるトコジラミ対策
トコジラミはカメムシの一種で、体長はわずか5ミリから8ミリ。昼間は人々の目から隠れ、夜になると活動を開始します。人の血を吸い、強烈なかゆみを引き起こすため、夜なかなか眠ることができず不眠症の症状に見舞われる人も少なくありません。
前述の通り、トコジラミの駆除はとても難しいです。そのため、今後もしフランスを訪れる機会があるなら、トコジラミを連れ帰らないための対策が必要です。
宿泊先の部屋に入ったら、まず荷物は浴室に置きます。特にベッド周辺は入念に、トコジラミが潜んでいないかを調べましょう。トコジラミ自体が見つからなくても、壁や床などに黒い点のようなシミがある場合は要注意。これはトコジラミの糞のシミなので、もし見つかったら部屋を変えてもらってください。また、荷物についてきてしまう場合もあるため、荷物は床には置かず、できればビニール袋で覆って保管しておくのもおすすめです。帰宅後は、玄関先などで荷物をすべてチェックしてから家に入ると安心です。
もしトコジラミを連れ帰ってしまった場合は、自力での駆除では不十分です。目に見えるトコジラミを駆除できたように思えても、生き残りのトコジラミが繁殖を始めて気がつかないうちに大きな被害になってしまうこともあります。トコジラミの駆除には、専門業者への依頼が不可欠です。