BA.2、XE…新型コロナウイルスの呼び方はどう決まるのか
2019年に最初の感染者が確認された新型コロナウイルス感染症は、2022年4月に感染者の累計が5億人を超えました。日本では減少傾向にありますが、規制緩和により人流が活発になり、それに伴って再び感染が拡大する可能性は十分に考えられます。まだまだ、事態は予断を許しません。
これまでの過程で、ウイルスは従来確認された株から何度も変異を繰り返し、新たな性質を獲得してきました。
従来株より感染力の強いアルファ株、さらに感染力が強く、重症化しやすいデルタ株。また2021年の終わりからは、重症化率こそ低い傾向が見られるものの、デルタ株を上回る感染力を持つオミクロン株が猛威を振るっています。
アルファ、ベータ、デルタなど、ギリシャ文字で呼ばれる分にはまだわかりやすいのですが、最近はBA.2やEXなど、アルファベットと数字を組み合わせた呼び名が用いられることも多く、情報を追いかけるのも一筋縄ではいきません。
本記事では、新型コロナウイルスの呼称に焦点を絞り、基本的な知識を解説してみたいと思います。
新型コロナウイルスの正規名称について
まず新型コロナウイルスの正式なウイルス名は「SARS-CoV-2」です。SARSは「Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus」の略で、日本語では重症急性呼吸器症候群と呼ばれます。2002年から2004年にかけて、主にアジアやカナダでアウトブレイクを引き起こしました。
原因となったのがコロナウイルス(Corona Virus)であったことから、このウイルスはそのまま「SARS-CoV」と名付けられます。
2022年現在流行している新型コロナウイルスは、SARS-CoVと同じウイルスを祖先に持っており、このことから「SARS-CoV-2」という名前が付きました。人への感染が確認された、2つ目のSARS関連コロナウイルス、という意味合いです。
ちなみに、COVID-19は、2020年2月11日に世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスSARS-CoV2による感染症に与えた名称で、「CoronaVIrus Disease of 2019」の頭文字をとったものです。
アルファやベータは株に対する呼称
SARS-CoV-2に限った話ではありませんが、同じウイルスでありながら違う性質を持っている変異ウイルスを「株」と表現して区別します。
ギリシャ文字は、この株を区別するために用いられるもので、WHOにより命名されます。
BA.1やXEはPango動的命名法による系統の呼称
BA.1やXEは、同じ株の中で起こった小さな変異を分類するための呼称です。
ただ、ウイルスが大流行すればするほど、変異体の数も膨大になります。情報共有の観点からも、システマチックにSARS-CoV-2の変異体を分類・命名する必要が出てきました。
そこで開発されたのがPANGOLIN(Phylogenetic Assignment of Named Global Outbreak Lineages)というシステムです。PANGOLINはエディンバラ大学のエイン・オトゥール博士とアンドリュー・ランボート研究室のメンバーによって開発され、2020年4月30日に公開。現在は、PANGOLINで付けられた系統名が国際的な基準として使われています。
ちなみに、頭のアルファベットが同じウイルスは同じ株に属するウイルスで、ピリオドで区切られた数字はその世代とバリエーションを表します。例えばB.1.2はB.1の2番目の子孫というような意味になります。
N501YやE484Kは変異の表現
N501Yのような、アルファベット-数字-アルファベットの組み合わせは、タンパク質のX番目のアミノ酸がAからBに置き換わった、というような変異を表す記述法です(アルファベットの一文字は、アミノ酸の略号です)。
例えばN501Yであれば、タンパク質の501番目のアミノ酸がアスパラギンからチロシンに置き換わったウイルス、というような意味になります。
一つひとつ覚えるのは難しいかもしれませんが、こうした名付けの違いを頭の片隅に記憶握しておくと、ニュース番組などの解説を聞く際などに少なからず役に立つかと思います。